会話
「自分が異邦人であることの確認といずれは立ち去っていく寂しさを認識するために、空間を移動して非日常に身を置き、日常との差異を取り出してカバンに詰めて帰ってきたいので、旅行に行かせてください」
夫に告げるとしばらく考え込んでいたがやがて口を開いてこう言った。
「人生は旅そのものなんだ。名所旧跡を訪れなくとも、その土地の名物料理を味わうことがなくても、旅人の心を持って過ごすことが出来れば、平凡な日常が好奇心と冒険に満ちた日々となる。そうなったらわざわざ遠くに出掛けることもないし重いカバンも必要ない。」
「それでは空気感と匂いと風を写し込めるカメラは売っていますか」
「高価な撮影機材を揃えるより君の感受性を磨いたほうがいいと思うよ」
「了解です、敬服いたしました」
※今日の会話を脚色してみました(大幅に)